「土産があるぞ」
「……。またぁ?」
「半年ぶりに帰ったのにずいぶんなあいさつだな」
「ああ、そうね。噂になってたよ、大仕事だったらしいじゃん。オツカレサマ」
「まったく労いが感じられないが…、まあいい。は最近どうしてたんだ」
「んー…こないだから家の裏に変な木が生えてんだけど、見た?」
「生えてたな」
「なんかキモい実がなってたでしょ」
「なってたな」
「それもいで、酒に漬け込んだりしてた」
「気色の悪いことを言うな」
「飲む?」
「飲まない。誰が飲むか。いや、それよりも土産があると言ってるだろう。少しは喜ぶとか、何を持ってきたんだろうと想像したりとかしろ」
「だいぶ前にそういうの終わったから。クロロいっつも色々置いてくじゃん。こないだのバカでかい鳥の心臓カサカサに乾かしたやつとかさ、なにあれ?もらった側はどうすりゃいいの?漬けるのか?漬ければいいのか?」
「お前なんでもかんでも漬けようとするのをやめろ。今回はもっとすごいぞ、ほら。秘境の山嶺に生息する古代蝶の標本だ。かつて古代人が洞窟に神を描く際に用いたとされる鱗粉の輝き、この色を現地の言葉では…」
「えースゴ、めっちゃ青〜〜」
「……まあ…。そういうことだ。まだある」
「まだあるの」
「ある亡国の妃が代々身に纏っていたという毛皮だ。新月の晩のみ夜露に濡れたように輝く様が、祖国の死を嘆いていると言われている」
「へー」
「羽織ってみるか?」
「え?じゃあちょっとだけ…」
「…………あ、ダメだな」
「おい今小声でダメっつったでしょ。聞こえてんだけど」
「悪い、失言だ。本当に。ただ、まったく似合わない」
「言い直しても同じだよ!もう帰れ、あとあのバカでかい心臓の干物も持って帰れ」
「待て、落ち着け。もう一つあるから」
「いやもう十分だって」
「そう言うな、これで最後だ。………。名前も価値も、わからないんだが」
「…」
「…」
「……見たことない花。これ、まだ咲いてるの?」
「生きたまま持ってきた。そういうことができる能力を、昔盗んでたんだ」
「そっか」
「ああ」
「クロロって花なんか愛でる趣味あったっけ?」
「ないな」
「じゃあなんでこれ盗ってきたの?」
「それは…」
「何?」
「お前の………、家の裏庭が目もあてられないほどひどいから」
「…」
「あ、待てそのわけのわからない酒を注ぐな。違う。まあ違わないんだが、つまり、俺が言いたいのは…。外の世界もなかなか…うん。なあ、、わかるだろ」
「全然わかんない」


だまっておれに


210707