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懐かしい声が耳を打った。最後に連絡を取ったのはハンター試験の合格直後、くだらないやり取りだった。そのあとすぐに念が解けてそれっきりだったのだ。なんで今。まさかバレた?陰で動き回っていること。胸騒ぎが起きる。でも。逡巡で一呼吸返事が遅れた。 『久しぶりだな、』 「……フィンクス」 『お前今ヨークシンにいるんだってな』 世間話でもするような感じで、口ぶりに険はない。どうして電話なんか。 「シズクから聞いたんですか?」 『それもある』 「も?」 『オレらに掛けられてる懸賞金目当てにガキが二人尾行してきてよ。そいつらパクノダに読ませたらお前の記憶があった』 「!?」 『ま、お前は尾行とは無関係みてーだが。でまあ……気が向いて掛けた』 キルアとゴンくんだ。人手が欲しい危ないことって旅団の尾行かよ!目眩がして思わず街路樹に寄りかかった。全身の血流が一気に流れ出して心臓が飛び出しそうだ。 「ふ、二人は?無事なんですか?」 『フェイタンキレさせてあぶねーとこだったがギリギリ無事だ』 なにやってんだ。よりによって誰をキレさせているのか。破天荒すぎるだろ。上った血の気が急速に引き始め、ついでに爪の辺りがそわそわしてきた。 『ノブナガがいたく気にいっちまってまだアジトにいる。そのうち帰してやんじゃねーか』 「よかった……」 『そんなにか?昨日今日会ったガキだろ。ああ、それから……』 ――すぐそばの歩行者信号が青に変わった。急かすような打刻音がいやに耳についたのは、フィンクスが束の間言い淀み、沈黙が落ちたからだ。 『恐らくウボォーが死んだ』 ブランド店のショッパーを提げた買い物客が小走りでこちらへ渡ってくる。大判の鮮やかなスカーフがひらひら宙を泳ぎ、ふわりと襟元へ収まると、信号待ちの車がせわしなく動き出した。 『マフィア側の念能力者といざこざあってな。今オレらはウボォーやったそいつを探してる』 「…………」 胸が詰まって言葉が出ない。本当だった、ヒソカの話。――淡々としたフィンクスの声。いつか乗った飛行船の振動。映像。呼び起こされた記憶がぐちゃぐちゃに混ざって、すごい速さでぐるぐる回っている。 フィンクスも黙っていた。私が何か言うのを待っていたのかもしれない。しばらくして、掠れた息と一緒にようやく出てきたのは「……そんな」の一言だけだった。 『てことだ。もう会わねーだろうが、、お前には……一応言っとく。あとあれだ』 「……何?」 『死にたくねーなら今夜は外出んな』 「え?」 『分かんだろ。じゃあな』 電話はそこで切れた。ピーッと甲高い笛の音で視線をやると、パトカーが数台道を塞ぎ交通規制が始まっている。程なく地下競売が始まる。この通りの先、セメタリービルで。携帯を滑り入れると歩き出す。思考と感情と身体はそれぞればらばらに、同じところへ向かっていた。一歩。また一歩。靴底に硬いコンクリートの感触が返ってくるたびに、言葉にはできない、たしかな手触りでわかる。旅団が何をしようとしているのか。 行ってどうする?そう思った。私に何ができる。何が――。答えられないまま、足は動き出していた。 走る。クロロに会うために。 3、3、3・2・120260810 |